Hair by Katsumi Matsuo
新型コロナウイルスの影響により、様々な業界で変化を求められる年となりました。
コレクションも同様ロンドンを皮切りに一番伝統と格式を重んじるパリでもデジタル版で開催されることになりました。コレクションムービーがタイムスケジュールに合わせてストリーミング配信され、ブランドによってはショールームの公開、服作りのプロセス、バックステージなど様々な独自コンテンツを公開し、さらには発表する地域も多様化し、デジタルファッションウィークとして動き出しました。
私の初めてのコレクションはアシスタントとしてニューヨークコレクションへの参加でした。20名ほどのモデルを9ミリのヘアアイロンでタイトカールに仕上げるスタイルでスピードも仕上がりにも多くの課題を持たせられた経験となりました。
Hair by Katsumi Matsuo
ヘアアイロンのルーツは紀元前3000年のエジプトで、アルカリを含む粘土を髪に塗り、木の枝に巻きつけたものが始まりだったようです。その後、ブロンズのヘアカーリングトングも発見され、ギリシャ、ローマ時代でも鉄や青銅の棒でカールをつけたりしていました。
現在のデザインに非常に近い形になったのは、1875年フランス、パリのマルセル・グラトーがマルセルウェーブを考案しました。上流階級の御婦人、そして欧州や米国でも流行り、20年代から30年代を代表するスタイルになりました。日本においては1904年頃、当時流行していた二百三高地という女性の髪型を作る道具として、火箸を現在のヘアーアイロンのように用いていたこれらは火で加熱して使うものでした。近年でもすべてのヘアアイロンはプッシュレバーに変化し、アメリカ、ヨーロッパではまだ存在していますが、グループハンドルのマルセルスタイルは日本ではすっかり姿を消し、フリッパーも短くなっていました。
Hair by Katsumi Matsuo
40年代以降はアメリカで第二次世界大戦の勝利を祈願してヴィクトリーロール、50年代からはLucile Ball 自身の映画で好んで行ったことにより当時の流行になったプードルヘア、Vogue 、Harper’s Bazaar、Elleなどの主要なファッション雑誌の表紙を飾ったスーパーモデルIvy Nicholsonのピクシーカットにカールスタイル。60年代はフランス出身の女優でファッションモデルでヨーロッパを代表するセックス・シンボルとしてMarilyn Monroeと同時期に活躍したBrigitte Bardotのボリュームのあるカールスタイル、70年代は 40の雑誌の表紙を飾ったJerry Hallのフリジーカール、 80年代には『スプラッシュ』で注目された女優の Daryl Hannahなどもやっていたクリンプヘア、その後はエフォートレスで無造作なカールやビーチウェーブなど様々なスタイルが生まれました。
このような歴史からもわかるように、時代は回ると言われますがやはり流行は変わっていくものです。私たちの業界は流行に鋭くなければやはりスタイルは古くなり想像力、感性、表現力などは衰え、技術の進歩は止まってしまいます。思考や行動が習慣化し新たな発見や成長が阻害されぬように次々に変化できるヒントは歴史にも隠されています。場所を問わず発信できる今の時代にそこから新しいものを創造し自分の個性が作り上げ流行を発信してみてはどうでしょうか?
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